昨夜、日々記を書いたあとに、デスクに引き寄せた一冊の書。ページをめくれば、北海道で触れたあの空気と空間が、指先から鮮やかに蘇る。旅の余韻とは過去への追憶ではなく、数年の時を経ても、今この場所で「答え合わせ」のように響き始める、現在進行形の力。椅子研究家・織田憲嗣氏の自邸、通称「織田邸」。ここは、いわゆる“心地よい暮らし”を体現する家ではない。そこにあったのは、使命を生きるための空間だった。世界的名作と呼ばれる椅子や家具、調度品の数々。本来なら展示ケースの中に収まっていてもおかしくない作品たちが、ここでは日常の中に置かれ、使われ、そして手入れされている。生活感を消すことも、特別扱いすることもない。名作品は名作品として、しかし違和感なく暮らしに溶け込み、日々の時間を共にしている。それはまるで、住まいという形式をとった、実践され続ける総合美術館のようだった。家具だけではない。食器やカトラリー、道具のひとつひとつにまで、織田先生の明確な審美眼が貫かれている。重要なのは「集めている」ことではなく、伝えるために使い、管理し、未来へ手渡すという役割を、この家が担っているという事実だ。ノートに記される情報、徹底された整理、行き届いた手入れ。それらは几帳面さの表れではなく、デザインの本質を損なわずに伝えるための、静かな責任感のように見えた。「住まいって、なんだろう?」快適さや癒しだけでは語りきれない。織田邸は、「暮らし」の枠を超え、思想とカタチを一致させるための場として存在していた。白の記憶は、東川町から望む旭岳――カムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)へとつながっていく。圧倒的な自然の質量。そしてそれに拮抗する、人の営みの密度。当時は気づかなかったが、写真を見返すと、山頂には不思議な雲が浮かんでいる。まるで、この営みを見守る存在がいるかのように。断捨離が美徳とされる現代において、織田邸が示していたのは、「減らす」ことでも、「飾る」ことでもない。選び抜いたものを、愛と責任をもって使い続ける。そのために住まいがある、という姿だった。書くことで、私は何度でも問いに立ち返る。そして、住まいという場を、その都度、あらためて再生していく。大分市でオーダーカーテンとインテリアコーディネートをご提案しているアルティマ工房です。暮らしを整える住環境づくりを通して、心地よい住まいづくりをお手伝いしています。別府市など近隣エリアにも対応しています。