たまたま映ったBSの番組で、ある職人さんの姿に、すっかり釘付けになってしまった。タイル職人の、白石普(あまね)さん。モロッコでモザイクタイルの修行を積み、帰国後はデザインから仕上げまでを、一貫してご自身の手で行っている方だ。その手から生み出される世界に、私は感動した。かたちと凹凸があつまり、滑らかな曲面をつくる。それは、生命を宿し、はっとするほど艶やかな色彩を放つタイルたち。そこに描かれているのは、緻密な図形であり、数学の美しさへとひらく理(ことわり)だった。彼は、その仕事を「天職」だと言った。誇りを携えながら、ひとつひとつの依頼に真摯に応え、惜しみなく想像し、かたちにしていく。「空間を引き立たせるデザインの可能性は無限」その言葉どおり、手をかける工程も、緻密な計算も、すべてをひっくるめて、心の底から楽しそうに向き合っている。その姿がたまらなく魅力的で、深い尊敬とともに、ただただ見入ってしまった。そんな彼のリアルな息吹に触れられる場所が、もうすぐ誕生するのだという。この4月21日にオープンする「OMO7横浜 by 星野リゾート」。その空間の一角に、あまねさんの手がけた作品が息づいているそうだ。「このさき、ゆくさき」。旧横浜市庁舎の記憶を受け継ぎながら、新たなデザインとして再構成されたタイル。外側には、旧横浜市庁舎当時のタイル。内側へと向かうにつれて、一枚一枚のタイルの欠けた面に新たな釉薬を施し、焼き直したタイルが重ねられていく。そして中央の青いタイルは、未来への扉として制作されたという。新旧の時間が静かに溶け合い、壁面に「今」の全体像が立ち上がっている。ただ美しいだけではなく、時間や記憶までも引き受けているような佇まいに、思わず足を止めてしまいそうだ。ひとつの素材と誠実に向き合い、手の中で時間を重ねながら、空間へと差し出していく仕事。答えを探る過程の中で、深く関わること。整えることも、味わいきることも。そんなふうに、自分の手の届く範囲から、もう一度、ていねいに関わっていきたいと思う。※トップ画像は、白石普さんの作品を公式サイトよりお借りしています。著作権は制作者に帰属します。作品一覧:https://www.tileworks.jp/project-category/01tileworks/