私にとって京都は、学生時代からずっと、感性を震わせ続けてくれる場所だ。繊細で雅びな文化と、長い時を耐え抜いてきた威風堂々たる存在。何度も訪れ、そのたびに新しく、そして深い感動を受け取ってきた。唐紙の文様に包まれた「銀月」で、千田ご夫妻の書籍をゆっくりと開く。翌日、導かれるように向かったのは、平安京最古の庭園、神泉苑。冬の澄んだ空気の中、願いを込めて法成橋を渡る。凛とした静寂の中に身を置くと、日々の喧騒で少しずつ摩耗していた感覚が、本来の瑞々しさを取り戻していくのがわかる。目的地までの道すがらも、京都は不意に「美」を差し出してくる。ふらりと立ち寄ったのは、菓子店「果朋(KAHOU)」。驚いたのは、店内の隅々にまで行き届いた美意識だ。飛沫防止のパーテーション一つをとっても、真鍮とガラスを組み合わせた洗練の極み。荷物置きの設えに至るまで、機能性と様式美が完璧なバランスで共存している。こうした細部の「もてなし」に触れるたび、住まいに関わる者として背筋が伸びる思いがする。新春の飾りを纏った二条城の、圧倒的なスケール感。その後の額縁専門店の、壁一面を飾る意匠に心が躍る。細見美術館で開催されていた吉岡幸雄氏の特別展。化学染料では決して辿り着けない、自然の命から写し取られた「日本の色」。その奥深く、独特なニュアンスのある色彩の階調(スペクトル)を鮮明に思い出す。私は再び、あの光の話を思い出していた。植物の染料は漢方とも紙一重。美しいものは身も心も癒す。私たちの身体が本当に求めているのは、こうした「嘘のない色」なのだと。自分へのお土産には、本田味噌本店の白みそを。京都の豊かな時間を、台所という私の日常へ持ち帰る。何度も訪れているはずなのに、京都はいつも私の中に新しい「振動」を残していく。受け取った光と色、そして静かな祈りを、大切に抱えて帰路についた。