久しぶりに、ガラスペンを手に取った。その瞬間、ある日の景色がよみがえる。福岡・大濠公園の近くにある、Linde CARTONNAGE(リンデカルトナージュ)さん。公園前を歩いていると、「ガラスペン」という案内板が目に入った。建物二階まで階段を上がってみたものの、まだ開店前だった。扉越しに、いくつかのガラスペンが見える。すると、店主の方から「どうぞ、お入りください。」そう声をかけていただいた。はじめて目にする、表情豊かな木軸のガラスペンは、フランスの作家、Patrick Evesqueさんの作品。COMÈTE(彗星)という名が付けられていた。環境と人との関わりをテーマに、作品や記録を紡いでいるという。手に持ったときの佇まい。そして、書き心地のなめらかさ。以前から気になっていた、ガラスペン。じぶんへの一本を、丹念に選んだ。選んだペンの説明カードには、南仏中部・ヴェルサイユの森で育ったロビニエと、記されていた。日本では、ハリエンジュやニセアカシアとも呼ばれる木だ。ガラスの透明感と、木のぬくもり。異なる素材が、一本のペンの中で静かに調和していた。その美しさに、心を奪われたことを覚えている。道具には、使うための役割だけではなく、記憶を運ぶ力がある。今日、そのガラスペンを手にしただけで、あの日の空気や、店主さんたちとのやり取りまで、思い出した。暮らしの中にあるお気に入りは、時間を重ねるほど、愛着という輝きを増していく。