二階の窓から、庭木に花が咲いているのに気づいた。白くて、中心が薔薇色に染まっている。清楚なハイビスカスのようにも見える花だった。なんていう名前だったかは、思い出せなかったけれど、特に気にしなかった。そのまま過ごしていた同じ日。車のラジオから、「芙蓉の花が…」という言葉が聴こえた。あっ、それそれ、と思わず頷いた。点が、一瞬でつながるような感覚だった。芙蓉。朝に開き、夕方にはしぼむ一日花。その短い時間の中で、静かに姿を変えていく花。思い出せなかった名前が、偶然のようなかたちで戻ってくる。庭と、ラジオと、記憶。別々だったものが、ひとつの線になる。芙蓉は、特別な世話をしなくても毎年咲く。それでも、その一輪があるだけで、庭の空気は変わる。切り花にはあまり向かず、庭木に咲くそのままの姿が、風景に映える。これから、次々と開いていく様子を、庭の中で静かに見ながら、夏を迎えていく。