電話が鳴る。足の踏み場もないくらいになってしまって、とにかく窮屈で、調子もよくないのだという。住まいは古く、時間の重なりがそのまま残っているような空間。広くて、しっかりとした場所へ移ったほうがいいのではないか。けれど、簡単な話でもない。母の代からご縁のあるその方は、いつお会いしても、豊かな笑顔と、張りのある声が印象に残る方。今も子どもたちへの指導に力を注ぎ、各地を行き来しながら、忙しい日々を過ごしている。物を減らせばいい、そう言い切れる状況でもない。内側に手をかける余白は少なく、それでも外へとエネルギーを注ぎ続けている。かつて、整った環境を知っているからこそ、今の違和感は、よりはっきりと感じられるのかもしれない。さて、どうするのがよいのだろう。整えるべきは、空間か、時間か、それとも、関わり方そのものか。まずは、いくつか物件を見てみることにした。条件に合いそうなものがひとつ見つかり、提案を送る。答えは、縁とタイミング。流れを変えるきっかけは、すでに差し出されているようにも感じている。