庭の梅の蕾が、ふわりとほどけた。見上げれば、蝋梅(ろうばい)が青空に鈴なりに咲き、甘やかな香りを漂わせている。植物たちが春の支度を始める頃、私は机に向かい、一冊の本を編んでいる。以前から、作りたいと思っていた写真集。タイトルは「はじめての記憶」。モニターの中に並ぶのは、家づくりに費やした二年間の景色だ。更地だった場所に柱が立ち、壁が塗られ、屋根がかかる。そして、その時間の流れと重なるように、ひとつの小さな命の記録がある。家づくりが始まった頃に生まれたあの子は、もう二歳になった。この本は、家の建築記録であり、同時にかけがえのない成長記録でもある。写真を選び、言葉を添える「編集」の作業は、過ぎ去った時間をもう一度愛でるような、なんとも豊かなひととき。けれど、この本を作った理由は、もうひとつある。それは、この家づくりという大事業を、見守り続けてくれたご両親へも贈りたかった。その深い愛情への感謝を、言葉だけでは伝えきれない「ありがとう」を、この一冊に込めて手渡したいと思った。あの子は今、絵本に夢中だけれど。いつかその小さな手が大きくなった時、この「家のはじまりの本」を開いてみてほしい。そこには、自分自身の「はじめて」の姿があり、家づくりに奔走した若き日の両親の笑顔があり、そして何より、自分たちを温かく包み込んでくれた祖父母の眼差しがあることを知るだろう。時を超えて、その先の子供たちへも。家は何も語らないけれど、こうして静かに、家族の歴史と絆を守り続けている。