山の日の朝。六時から始まる龍笛のライブ配信を聴きながら、ゆっくりと呼吸体操をした。演奏の場所は福岡県の星野村。龍笛は雅楽で使われる竹の管楽器で、その音色は笛というよりも風に近い。遠くから吹いてくる風のようでもあり、山あいを流れる空気のようでもある。龍笛の美しい音色は、静寂とひとつになる。だからこそ、そのあとの静けさまで心地よい。次の曲が始まるまでの時間。鳥のさえずりが聞こえる。風が木々を揺らす音が聞こえる。山の気配が聞こえる。演奏が途切れたのではなく、自然がそっと引き継いだようだった。私たちはつい、空いた時間を埋めようとする。予定を入れたり、音を流したり、情報を取り込んだり。けれど、本当に心地よいのは、何もない時間なのかもしれない。静寂があるから、鳥の声が聞こえる。余白があるから、呼吸が深くなる。呼吸を合わせているうちに、少しずつ肩の力が抜けていく。深く息を吐き、静かに吸う。それだけで、身体も心も少し整っていく。龍笛が空へと伸びていく。そして私は、いつもより少し深く呼吸をしていた。