6年前の夏。北海道を旅したときに、今でも心に残っている滞在先がある。岩見沢市栗沢町の山あいにある、「NORD HOUSE」。スーパーもコンビニもなく、緑の中を車で奥へ、奥へ。たどり着いた先には、静かな家と、北海道の澄んだ空気があった。到着すると、以心伝心したかのように、夕張メロンをいただいた。夜には、東京から移住してきたという女性のタイ古式マッサージで、ゆっくり身体をほぐしてもらった。そして翌朝。窓辺の巣箱には、鳥たちがやってくる。窓の向こうには、北海道の夏の終わりを思わせるオオハンゴンソウの黄色い花。静かで、美しい朝だった。何より印象に残ったのは、古い家屋をご夫婦で丁寧に作り込んで、手入れしていたこと。その家が持っている味わいを残しながら、家具やインテリアで少しずつ色を添えていく。イエローの冷蔵庫。グリーンのタイルを使ったテーブル。味わい深いレトロな椅子。ひとつひとつが、その家によく似合っていた。新しいものを集めただけでは出ない、時間を重ねた家ならではの心地よさ。そこにあるものを見つめ、手を入れ、大切に使い続ける。そんな暮らし方が、とても美しく感じられた。わずか一泊だったけれど、まるで北海道にもうひとつの家ができたような気持ちになった。6年経った今でも、あの朝の景色を思い出す。旅先で出会った家は、その場所を離れたあとも、ときどき心の中に帰ってくる。