食卓の景色を整える。器の質感を合わせ、箸の手触りまで考える。実際にそこへ滞在する誰かの時間を想像している。引き出しを開けた時、タオルを手に取った時、照明を落として椅子に座った時。そんな小さな瞬間の積み重ねが、「なんだか落ち着く」という感覚をつくっていくのかもしれない。宿泊空間のコーディネートを進めながら、やっぱり思う。おひとりさまのための小さなゲストハウスをつくろう、と。遠くへ旅をするためではなく、自分へ戻るための場所。身近な土地で、深呼吸をするように過ごせる場所。素朴だけれど、丁寧に整えられた室礼の中で、少しだけ余白を取り戻せるような空間。思っていることを自然に話せたり、目の前のご縁に静かに感謝できたり。「また来たい」というより、「ただいま」と言いたくなるような場所が理想なのだと思う。“リゾート”という言葉には、「再び訪れる」という語源があるそうです。何度も帰ってきたくなる場所。それは、豪華さだけでは生まれない。光や音、空気感や水まわり、引き出しの中の整え方まで。小さな配慮の積み重ねが、その場所の空気をつくっていく。そしていつか、そんな住処を、こころある誰かがまた受け継いでくれたなら。空間もまた、人から人へめぐっていくものなのかもしれない。