思考を深め、十分に休んだあとは、自然と身体を動かしたくなる。このモデルルームで、次に向かったのは家事室(ユーティリティ)。ここは、暮らしの代謝を促すエンジンのような場所。棚に掛けた一枚のエプロン。トップの写真に選んだのは、その佇まいだった。紐をキュッと結ぶ。それは、日常という舞台に立つための小さな合図のようでもある。「さあ、始めよう」そんな気配が、布のシワに残っている。家事室の演出で心がけたのは、「隠す場所」ではなく「いたくなる場所」にすること。洗濯や整理整頓は、決して味気ない作業ではない。道具の選び方ひとつで、それは創造的な時間に変わる。有孔ボードに掛けた白いバケツ。使わないときはペタンと畳める機能を持ちながら、壁に掛かれば、どこかオブジェのようだ。無機質になりがちな家電のそばには、木の質感と、グリーンの瑞々しさを添える。黒いアイアンのラインが空間を引き締め、甘くなりすぎない、大人の作業場をつくっている。ふと棚に目をやると、料理のレシピ本や、暮らしのエッセイ。洗濯機が回るわずかな時間さえ、心を整える余白になる。「パワーサラダ」という文字が、家族の健康を思う気持ちを、さりげなく伝えている。丁寧に選ばれた道具たちは、声高に主張することはない。けれど、確かにこう語りかけてくる。暮らしを整えることは、自分自身を整えることなのだと。葉先を揺らす、柔らかな空気。整然と並んだボトルの列。ここにあるのは、義務としての家事ではない。明日を心地よく迎えるための、静かで、前向きなリズム。このモデルルームの連載では、空間を通して、そんな暮らしの手触りを一つずつ、拾い集めている。