佐賀・古湯温泉からの帰り道。途中、元祖 吉野家 で、さくらの白玉饅頭をひとつ。そのまま足は、隣の RITMUS(リトムス) へと向かう。春ならではの味と風景が、やわらかな陽気の中で、重なっていく。道を挟んですぐの川沿いに、満開の桜が連なり、春の風に乗って、鯉のぼりたちがのびやかに泳いでいる。かつて、オレクトロニカさんの個展をきっかけに教えてもらったこの場所は、いつ訪れても、私にとって感性の補給地点。静かに並ぶ、美しい道具たち。そのひとつひとつに、確かな気配が宿っている。その日、ふと目に留まったのは、小さな木製のバターケース。冷蔵庫の中でも場所を取らず、愛らしく収まる、絶妙なサイズ感。店主さんが見せてくれた、10年使い込まれた私物のケースの佇まいには、思わず見入ってしまった。木をくりぬいてつくられた、継ぎ目のない、手のひらほどの小箱。「残ったバターはカットしてラップに包み、冷凍庫へ」そんな何気ない習慣の中にある、道具を育てる知恵と、年月が育てた清潔な美しさ。その響きに触れて、この小さな木の箱を、我が家の食卓へ迎えることにした。目に見える形を整えることは、そこに流れる時間を慈しむこと。さくら色の余韻を連れて帰った、あたたかな、出会いだった。