シェルフレームが完成した。全部で九枚。同じ浜辺で拾った貝なのに、ひとつとして同じ表情はない。整ったもの。欠けたもの。丸みを帯びたもの。波に磨かれたもの。並べてみると、それぞれが違う景色を持っている。不思議なもので、眺めているうちに、音まで聞こえてきそうになる。静かな波。遠くの潮騒。砂浜を撫でる風。額の中にあるのは貝なのに、そこには海の気配がある。背景に使った襖紙も、波打ち際の砂浜のように見えてくる。九枚それぞれに、少しずつ違う音があるような気がした。明日は早朝から現地へ向かう。車には荷物を積み込み、忘れ物がないかひとつずつ確認する。シェルフレームも、無事に梱包できた。キッチン用品も同じだ。引き出しの寸法に合わせて、配置を確かめながら準備を進めてきた。カトラリー。調理道具。クロスやマット。引き出しを開けたときの使いやすさまで想像する。こうした準備は、現地ではほとんど見えない。けれど、見えないところほど大切だったりする。空間は、当日つくられるものではない。その前の準備の積み重ねが、心地よさになって現れる。明日は搬入の日。九つの小さな海も、それぞれの居場所へ旅立っていく。静かな夜。耳を澄ませると、さざなみの音が聞こえてくるようだった。