絶え間なく聞こえてくるせせらぎの音。別府での仕事を済ませ、午後のひととき、柴石(しばせき)温泉へと足を運んだ。十一月から、地元の良さを見直そうと始めた温泉巡り。今日で七箇所目。大分に住んでいながら、このエリアに足を踏み入れるのは実は初めてのことだ。どこか知らない土地へやってきた旅人のような、新鮮な高揚感。ここは静かで、息がしやすい。内湯に入ると、窓からのやわらかな光が湯気のなかにほどけて広がり、湯の音や人の気配が天井や壁にやさしく反響する。そのまま、まろやかな湯に身体を委ね、蒸湯(むしゆ)へ。熱い蒸気に包まれたあと、露天へ向かう。午前中は熱かったらしいけれど、今はそのまま入るにはかなりぬるい。けれど、蒸湯で火照ったあとには、それがちょうど心地よかった。源泉掛け流しの湯は、それぞれに個性があり、土地の呼吸を感じさせてくれる。普段の生活に深く根付き、当たり前にそこにあるもの。けれど、そこにはまだ知らない奥行きが、数えきれないほど隠れている。身近な場所を、まっさらな目で見つめ直す。そんな「小さな旅」を繰り返すたびに、自分の暮らしの土壌がより豊かになっていくのを感じる。足元に広がる豊かさを慈しみながら、まだ見ぬ「縁」の先へ。巡りゆく景色のなかで出会う、一期一会の美しさを。この場所から、また新しく綴っていきたい。