ふと、「感謝」の「謝」という字は、なぜ「謝る」なのだろうと思い、そのまま言葉を検索した。すると、最初に目に飛び込んできたのは、音楽療法士であり、著書も出されている一人の方の文章だった。しかもその方は、かつて住まいに関わらせていただいた、ご縁のある方。それだけではない。もともと、その方は、私にとって眩い存在だった。母が生前、歌を習っていた頃、年に一度の音楽会で、私はその方のことを知った。とても美しく、やさしく、とびきりの笑顔で会場を包み込み、音とリズムに合わせて、身体を動かす楽しさを、観客のみなさんと分かち合っていく。歌う人、聴く人、動く人。境目がほどけ、場全体がひとつの呼吸になるような時間。エレガントで、チャーミングで、そこにいるだけで空気がやわらぎ、同時に華やぐ。毎年その音楽会に足を運ぶたび、私はワクワクしながら、その姿に見惚れていた。そんな方から、ある日、オンラインで住まいの問い合わせが届いた。名前を見た瞬間、驚いた。ご縁というものは、本当に、思いがけないところでつながる。同じ疑問を抱き、同じ言葉に辿り着く。検索という小さな入口から、記憶と時間と人が、静かに重なっていく。それは「偶然」というより、響きが合った、という感覚に近い。共鳴、あるいは共振。その方のお宅には、一匹の小さなわんちゃんがいる。私が作業をしているあいだ、いつも間近で、じっと手元を観察している。騒がず、動じず、ただ静かに。思わず、「教授!」と呼びたくなる佇まいだ。——きっと前世は研究者だったのでは。そんな妄想が自然と浮かぶほど、落ち着きと集中の気配をまとっている。けれど聞けば、そのわんちゃんは保護犬で、この家に来た当初は、警戒心が強く、散歩に出ることさえ怖がって真っ直ぐ歩けなかったという。それが今では、ゆったり落ち着いている。まるで、本来の性質に戻ったかのようだ。新しい家庭で、たっぷりと愛され、大切にされ、安心の中で時間を重ねるうちに、その子は、自分の輪郭を取り戻していったのだと思う。リビングには、本格的なクラシックオルガンがある。今もレッスンを続けていらっしゃると伺った。アメリカの教会で体感したという、パイプオルガンの多重な音の話も、お茶をいただきながら聞かせていただいた。空間と共振し、天から降り注ぐようだったという音のシャワー。私は、まるでその場に立っているかのように、その空間や音を想像した。お打ち合わせを重ねていく中で、その方は迷いなくこう言われた。——トルコブルーのラグを置きたい。目の覚めるようでいて、深く、清い青。その言葉に導かれるように、私は一枚のラグを探し、輸入し、この家に、迎え入れた。真っ青なラグが映えるインテリアの中で、その色は、不思議なほど自然に馴染んでいる。静けさと華やぎをあわせ持つ、その方そのもののような色だった。住まいは、言葉を持たない。けれど確かに、そこにいる存在の緊張をほどき、本来の姿を、そっと呼び戻す力を持っている。小さな教授は今日も、トルコブルーの気配を背に、幸福感に包まれ、静かに座っている。その後、オーガナイズ(片付け)のお手伝いもさせていただいた。感謝の「謝」は、頭を下げることでも、自分を責めることでもなく、いったん力を抜いて、相手に心をひらくこと。憧れだった人との再会。言葉を介した共鳴。音と色と、静かな犬のまなざし。今日という一日は、そのすべてが、やさしくつながっていた。大分市でオーダーカーテンとインテリアコーディネートをご提案しているアルティマ工房です。暮らしを整える住環境づくりを通して、心地よい住まいづくりをお手伝いしています。別府市など近隣エリアにも対応しています。