昼の月と目があう。澄んだ青空が、どこまでも続いている。そういえば、しばらく雨が降っていない。乾いた庭に水を撒けば、土が喉を鳴らすようにぐんぐんと水分を吸収していく。ふと見れば、光を透かす葉の先には、まるでダイヤモンドの欠片を散りばめたような水滴が宿っている。一粒一粒が、宝石さながらの輝きに見える。明日は別府大分毎日マラソン。上空では中継の準備だろうか、ヘリの音が忙しなく行き交い、街全体がどことなく高揚感に包まれている。そんな賑やかな空の下での昼下がり。ふと導かれるように足を向けたのは、その名に「月」を冠する場所。大分市中島にあるインド・ネパール料理店「チャンドラマ」だ。サンスクリット語で「月」を意味するその店名が、先ほど見上げた白い月と重なり、妙に腑に落ちる。扉を開けると、インド人の主人が「いらっしゃいませえ〜」と、耳に馴染んだいつもの調子で迎えてくれた。土曜日でも「ビジネスランチ」が選べるのは、嬉しい。今日の日替わりは、キーマと小松菜のカレー。辛さは「2」を選んだ。ここに来ると、まず手を伸ばしたくなるのがセルフサービスのスープ。今日の一杯は、とんこつ風のコクがあり、そこにスパイスが絶妙な加減で効いている。クミンシードがふわりと香り、胃を優しく、かつ力強く動かしてくれるような、いつ来ても深みのある味わい。そして、この店を象徴するのがオリジナルのドレッシング。カレーのスパイスと不思議なほど相性が良く、マイボトルを持参すると、必要な分だけ購入できて、家でもあの味わいを楽しめる。環境にも配慮したこのスタイルも、この店らしくて好ましい。インドカレーに使われるスパイスは、いわば「食べる漢方」。消化を助け免疫力を高めるクミン、抗炎症作用のあるターメリック(ウコン)、重金属のデトックスを促すコリアンダー、そして代謝を上げるチリ・ペッパー。一口ごとに複雑な香りが鼻を抜け、身体がじんわりと軽くなっていくのを感じる。日本人の奥様と、インド(あるいは南アジア)出身のご主人。その周りを支える料理人の方々の息の合った動きが、この店の空気をつくってる。お腹も心も満たされての帰り道、冷たく澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込む。内側からの熱と、外側からの静寂。その心地よいバランスを全身で感じながら、また一歩、暮らしを整える場所へと歩き出す。次こそは、お腹を空かせて。おすすめ新メニューの「ブラックカレーランチ」を、味わってみたい。