記念日の食事に、久しぶりに中津の海辺にある「ホリスティックカフェ」を訪れました。前日までの天気予報は、日中ずっと雨。けれど当日は、やわらかな青空ものぞく春の陽気に包まれた一日に。目の前に広がる、引き潮のやさしい海。運ばれてくるお皿の中は、まるで季節の絵画。色鮮やかな春菊のソース、瑞々しい野菜の色彩。それは、作り手の内側が整っているからこそ生まれる、深い滋養のある一皿のように感じられました。一口ごとに、心と体がゆっくりとほどけていくような感覚。特に印象に残ったのが、鹿肉のジビエ。低温でじっくりと火入れされた、驚くほど繊細な赤身。その豊かな滋味が、体の奥へと静かに沁み込んでいくようでした。食事の最中から、内側がじんわりと温まり、巡りが整っていくのを感じます。また、その美味しさを引き立てていたのが、カトラリーの見事な切れ味でした。以前、こちらで料理レッスンを受けた際に、手入れされた美しい包丁に惹かれて、同じものを取り寄せました。けれど、使ううちに自分ではなかなか切れ味を保てず、相談してみると、実際に使われている研ぎ石を見せてくださいました。道具を整えることは、自分を整えることにも繋がっている。そんなことを、あらためて感じたひとときでした。食事のあと、目の前の海岸へ。貝殻を拾ったり、写真を撮ったり。年月が流れても、こうして変わらず訪れることができる場所があること。そのささやかな喜びを、春の潮風とともに味わいました。美味しい、ということ。それだけで、心も体も、こんなにも満たされるのだと感じます。整えていただいた感覚のまま、また日々を重ねていきたいと思います。