庭に、水仙が咲いている。誰に見せるでもなく、ただ、そこに在る、という姿で。 朝の光を受けて、白い花びらが、静かにひらいている。整っている、とも違う。頑張っている、わけでもない。けれど、触れたくなるほど、まっすぐで、澄んでいた。 人はつい、整えようとする。もっとよく見せようとか、ちゃんとしようとか、評価される形に寄せていく。それが悪いわけではないけれど、どこかで、少しずつ遠くなる。ほんとうの自分から。 水仙は、何も足していない。季節が来て、ただ、ひらいただけ。 それでも、こんなにも美しい。 いい出会い、というのは、もしかすると何かを持っている人ではなくて、何もまとっていない人なのかもしれない。 そのままで、そこにいる人。 庭のすみで揺れる花を見ながら、そんなことを、ぼんやり思った。 風がすこしだけ通り抜けて、花が、かすかに頷いた気がした。