今ごろ子どもたちは、南青山でイタリアンのランチコースを食べているころ。偶然にも、そのお店は、わたしが昨年の秋にひとりディナーを楽しんだ場所でした。実はこちらのシェフは、イタリア各州の名店で郷土料理を学ばれ、地産地消や「素材をいかす」料理を大切にされている方。秋にいただいた料理からも、その誠実な姿勢が静かに伝わってきました。なかでも忘れられないのが、シェフのスペシャリテ。長谷川農産のブラウンマッシュルームのラグーソースをたっぷりと絡めた、「ピーチ」という手打ちパスタです。言葉では言い尽くせない、絶妙な美味しさ。実際に味わってこそわかる一皿でした。そしてどの料理も、素材の味が活きており、ひと口ごとに奥行きを見せ、感動を呼びました。その日のメニュー表は今もこうして手帳に貼ってあります。シェフの素材への深い愛情と確かな経験が、あの静かで豊かな味わいを作っていたのだなと、あとから記事を読んで腑に落ちました。(シェフのストーリーはこちらから読めます)https://www.ristoranteakita.com/chef.html軽井沢まで続く秋のひとり旅。東京では、シェフの芸術的な仕事ぶりに触れた。いつか息子も一緒に、と思っていたお店。それが思いがけず、今回の旅程に入っていると知って、必然は時を待たずやってくるのだと、驚きました。その食事案に賛同してくれた友人たちも、本当にすてきだなあと思います。さらにもうひとつ、リストランテアキタさんのRecruitページに、こんな言葉が綴られていました。「食材に個体差があり、最大限引き出すのがシェフとしての仕事であるように、人も同じだと考えています。」この言葉を読んだとき、なんだか子育ての核心に触れたような気がしました。17、18歳という、定まる前の巣立ちの時期。今もこれからも、彼らが自ら選択していく道は、案外、幼いころから好きだったことや、自然と身についていること、得意なことの延長線の先にある。もう彼らを信じて、お任せの「全自動」でいいのかもしれない。親として伝えているのは、「進路は自由。夢中になるほど大好きなことをしたらいいし、トライ&エラーできるほどいい」ということだけ。それぞれが持つ「個体差」という魅力的な素材を、彼ら自身の力で最大限に引き出していってほしい。そう願いながら見守る今の親心とも、シェフの想いが静かに重なりました。そんな一流の仕事と、あたたかいもてなしに触れて、彼らがどんな感想をもって帰ってくるのか。今からとても楽しみです。大切にもてなされる至福を、子どもたちだけで味わう時間。質の高い仕事に対して手渡すお金。それは、使えば減るだけの「もの」ではなく、心から「ありがとう」「応援しています」が広がるエネルギー。そうして誰かの仕事に敬意を払う経験もまた、きっと彼らにとっては新しい立場の学び。きっとそれは、これからの人生に生きた記憶として残るのでしょう。