大分・耶馬溪の里山に抱かれたレストラン「Sardinas(サルディナス)」と、その奥の宿「DONOSTIA(ドノスティア)」。今回は、冬に訪れた時の「空間」の話を。扉を開けた瞬間、オーナーの深い愛と、手仕事の熱量が、空間の隅々にまで行き渡っていた。植物は、まるで意志を持ったアートのようにそこに在る。窓枠が切り取る冬の耶馬溪の景色と、室内の静寂が、見事に調和している。印象的だったのは、ロフトへと続く梯子(はしご)だ。木肌が滑らかで、計算された作り。一歩一歩、踏みしめるたびに、木の凹凸が足の裏を心地よく刺激する。それはまるで、全身をほぐすツボ押しのよう。上り下りする動作さえも、この家と対話するような豊かな時間に変えてくれる。手持ちのショールを窓辺にかけてみた。冬の柔らかな光が布を透かし、虹色のような影を落とす。私が持ち込んだ色が、以前からそこにあったかのように、空間にしっくりと馴染んだ。身近な場所にある、非日常。すべてがオーナーの感性というフィルターを通して調和し、私たちを包み込む。作り手の愛が、そのまま居心地の良さになる。そんな幸せな空間で過ごした、冬の記憶。旅の引き出しには、まだ続きがある。実はこの大分の里山エリアで、もうひとつ、深く心に残る宿がある。その場所での記憶は、また近いうちに綴りたい。