アトリエの庭では、蝋梅の蕾が静かに、確かに膨らみ始めている。最近の空は青く澄み、吸い込まれるような清々しさがある。この透明な日常を前にすると、守られていることの意味を、ふと思い返す。そんな思いがよみがえるきっかけになった出来事が、秋に一度あった。それは、ようやく涼しくなり、窓を開けずに眠った日のこと。午前四時ごろ、静まり返ったアトリエに、マナの吠え声が突然響いた。普段は朝まで静かに眠る彼女。どうかしたのかなと思い様子を見に行った。けれど、吠え止まない。その声は、甘えや要求ではなく、何かを警告するかのような、鋭さを帯びていた。静寂の中で耳を澄ます。微かな物音。南側テラスの大きな窓。ふと、カーテン越しに外をみた瞬間、そこに動く人影があるのが見えた。驚いて動揺したけれど、まずは一旦、スマートフォンから警察へ連絡し、今起きている状況を伝えた。マナが再び吠え出したので、先ほどの南側に行ってみた。すると窓から誰から入ろうとしてるので、通話したまま、「何かご用ですか?」と咄嗟に声をかけた。その瞬間、人影は足を引き、入室することをやめた。マナはずっと、吠え続けていた。初めて起きた、不審者の出来事。実は以前、店舗を借りていた頃に、空き巣被害に遭った経験がある。あの時は自分の不注意もあり、金銭的な被害を受けた。それは苦い教訓となったけれど、同時に、その後の思いきった決意へと向かう、ひとつのきっかけにもなった。今回、マナが異変に気づいてくれたことは、とてもありがたかった。ほどなく駆けつけてくれた刑事さんは、スマートに事情を聞き、現場を確認し、事を穏やかに収めてくれた。マナのおかげで、最悪の事態は免れた。いつもは「かわいい存在」だけれど、この時の彼女は、わが家にとって紛れもない守り手だった。そして今、庭に出ているマナは、誇らしげに青い空を見上げている。言葉は通じなくても、彼女はこの場所と、ここにいる私たちを護るという役目を、確かに引き受けてくれている。小さな守神に、心からの感謝を。冬の青空は、何もなかったかのように澄みわたり、今日を静かに照らしている。春を待つ黄色い花の香りが漂い始める日も近そうだ。済んだことは、すっかり水に流して、頼もしい小さなパートナーとともに、今の一歩を味わっていこうと思う。