朝いちばん、カレンダーをめくる。二月の印象を纏って、新しいひと月の空気を運んでくる。午前は恒例の一日参りへ。雲ひとつない青空で、社殿の飾り金具がよく光っていた。境内の楠の幹に、今日は触れてみる。ごつごつした木肌。冷たさの奥に、芯の強さみたいなものがある。手を離すのが少し惜しい。午後は沿道へ。別府大分毎日マラソン。今年はいちだんと人が多い。拍手と声援が途切れない。「がんばれー!」という声があちこちから飛ぶ。子どもたちの澄んだ声は、よく通る。トップの選手たちが通り過ぎたあとも、応援は続いていた。順位とは別のところで、走り続ける人がいる。その人たちを励ます声が、ずっと道に残っている。家に戻って、日々記を書きながら窓の外を聞く。もう一時間以上経っているのに、まだ声がする。寒い一日なのに、なぜか温かい。床の間を整える。今はまだ、立春を待つ雪景色の掛け軸を。そこへ可憐な梅の枝を添え、さらに麒麟の絵が描かれた古伊万里の染付皿を置いた。麒麟は、泰平の世に現れるとされる瑞獣。朔日の今日、この器を据えることで、新しい一ヶ月が穏やかで幸多きものとなるよう願いを込める。雪景色の白。梅の香。そして、染付の深い藍。冬をもう少し眺めながら、春を迎える支度をする。静かに整えた床の間から、次の季節の気配がふっと立ちのぼってきた。